実家じまい、どこから始める?プロが見た“片付けの現実”と心の整理法

食器をテーブルに並べている写真

実家じまいって何?後悔しないための準備と進め方

親が亡くなったあと、あるいは施設に入ることになったとき、多くの人が向き合うのが「実家じまい」。

それは、単なる片付けではなく、家族の記憶や感情と向き合う、大切な節目でもあります。

この記事では、私たちがこれまで関わってきた実家じまいの経験をもとに、準備から進め方、よくある悩みまで、丁寧にご紹介します。


実家じまいとは?――片付けだけじゃない、“人生の一区切り”

実家じまいとは、親の住んでいた家を整理し、管理・処分する一連の作業のことです。空き家のまま放置すると、防犯や税金の問題もあるため、早めの対応が望まれます。

また、「実家じまい」は物理的な片付けだけではなく、心理的・感情的な整理のプロセスでもあります。親との思い出が詰まった空間を片付けることは、時に葛藤や悲しみを伴うもの。特に長年実家を離れていた場合、「どう手を付ければいいかわからない」と感じる方も多くいらっしゃいます。

多くの場合、次のようなタイミングでご相談をいただきます。

  • 親が亡くなった後、四十九日を終えた頃
  • 高齢の親が施設に入居した直後
  • 空き家状態になり、防犯や固定資産税の問題が心配になったとき
  • ご自身が定年や人生の転機を迎えたタイミング

「まだ元気だから先でいい」と思っていても、いざとなると想像以上に時間もエネルギーも必要なもの。早めに準備を始めておくことで、心にもゆとりが生まれます。


実家じまいの進め方【チェックリスト付き】

① 家の中の仕分け作業

古い写真や使い込まれた家具、時には何十年も前の手紙が見つかることも。

作業中に思い出話が飛び出すことも多く、片付けはただの作業ではなく“心の整理”でもあります。

私たちは、ご家族と一緒に一つひとつの物と向き合いながら、「残す・譲る・処分する」の仕分けを丁寧に進めていきます。

② 形見分けと親族の調整

「これは誰が引き取る?」「この仏壇はどうする?」など、判断に迷う場面も少なくありません。

ご家族の中であらかじめ話し合いの機会を持ち、意見をすり合わせておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。

③ 不用品の処分と専門業者の活用

大量の家具や生活用品を自力で処分するのは、体力的にも時間的にも大変です。

私たちのような専門業者に依頼すれば、仕分けから搬出、処分、リサイクル、供養までを一括で対応可能です。

④ 家の今後についての検討

空き家をこのまま残すのか、それとも売却・解体するのか。

築年数や立地条件なども踏まえ、不動産会社や行政とも連携しながら、次のステップを一緒に考えていきます。


実際にかかる費用は?一例をご紹介

以下は、あるご依頼で実際にかかった費用の一例です

  • 遺品整理業者:約35万円(2トントラック2台分)
  • 解体工事:約180万円(木造2階建て・土地100㎡)
  • 登記・各種手続き:約10万円

費用は状況により前後しますが、事前にしっかり見積もりを取り、納得して進めることが大切です。


実家じまいでよくある悩みと、私たちのサポート

■ 家族の意見が合わない

「片付けのタイミング」や「どこまで残すか」で意見が割れることも。

私たちは中立の立場でご家族の話を聞きながら、円滑な進行をお手伝いします。

■ 物が多すぎて手が止まる

どこから手をつけていいか分からない——そんなときは、仮置きスペースの提案や、仕分けの順序づけもサポートしています。

■ 遠方で時間が取れない

現地に行けないご家族のために、ビデオ通話での確認や、立ち会い不要の作業も対応可能です。


実家じまいをプロに頼む意味とは?

「思い出が多すぎて進めない」「何を残せばいいのか分からない」

そんなときこそ、第三者である私たち専門業者の存在が力になります。

仏壇や写真の供養、貴重品の探索、判断に迷うものの一時保管など、単なる片付けを超えた“気持ちの整理”もお手伝いします。


【体験談】母との時間をたどった実家じまいの記録

実家じまいに取りかかったのは、母が施設に入ることが決まった日でした。

父を早くに亡くし、私と妹を育ててくれた母の暮らしが詰まった家。その玄関を開けた瞬間、思わず言葉を失いました。

古びたカメラ、すり減った箸、子ども時代のランドセル。どれもこれも、触れるたびに記憶がよみがえってきました。

仕分けはなかなか進まず、何度も手が止まりました。でも、母の希望を聞きながら少しずつ分けていくことで、自然と心も整理されていきました。

思い出の手紙や写真はアルバムにして、母と一緒に昔話をしながらまとめました。大量の家具は業者さんにお願いしましたが、仏壇を見つけたとき「どうされますか?」と声をかけてくださったのが、とてもありがたかったです。

最後に空っぽになった家の前で、妹と並んで手を合わせました。「ありがとう、おつかれさま」

母も「すっきりしたわ。これで気持ちが切り替えられる」と、晴れやかな表情を見せてくれました。

実家じまいは、物を片付けるだけじゃない。

思い出をたどり、自分たちの人生と向き合う、大切な時間だったと心から思います。


まとめ|実家じまいは「未来への整理」

実家じまいは、思っている以上に体力も気力も使います。だからこそ、無理せず、できるところから始めるのが一番です。

「いつかやらなきゃ」と感じているなら、今日できる一歩から。

その一歩が、家族のこれからを支える大切な土台になります。

私たちは、そんな一歩をそっと後押しする存在でありたいと思っています。

投稿者プロフィール

二見 文直
二見 文直株式会社ウインドクリエイティブ 代表取締役
YouTubeチャンネル「イーブイ片付けチャンネル」運営者。
1984年大阪府生まれ。一般社団法人遺品整理士認定協会認定遺品整理士。生前整理技能Pro1級。
2010年よりリサイクル販売業界に携わり、2014年に独立。単なる不用品回収ではなく、お客様が笑顔で穏やかな生活に戻れるよう、丁寧で気持ちの良いサービスを目指し、2015年に「イーブイ(屋号)」を立ち上げ、関西を中心に不用品回収、ゴミ屋敷の片づけ、遺品整理などのサービスを提供している。

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