自殺を招くセルフネグレクトとは?孤独死と深く関係していた

自殺を招くセルフネグレクトとは?孤独死と深く関係していた


ひと昔前までは、大家族で食卓を囲みひとつの家で生活している人が多数でした。
現在は核家族化や、親元から離れ一人暮らしをする人が増え、セルフネグレクトに陥る人が増えていることをご存知でしょうか。

些細なことからセルフネグレクトになり、またセルフネグレクトに陥った人は自殺や孤独死に繋がりやすいと言われています。
この記事では、セルフネグレクトに陥る人の特徴や原因、また孤独死とセルフネグレクトの関係性について解説していきます。
セルフネグレクト、そして自殺や孤独死から守るにはどのようにすればよいのでしょうか。

セルフネグレクトとは


セルフネグレクトとは、「セルフ=自分」と「ネグレクト=無視する、怠る」の2つの言葉を合わせた言葉で、直訳すると「自己放任」という意味です。

生活を維持する能力と意欲が著しく低下し、自らの健康や安全が損なわれている状況を指します。
セルフネグレクトは「緩やかな自殺」とも言われており、生活する意欲がなくなることで、生きていく上で必要なことを行わなくなり自殺や孤独死を招いてしまうのです。

ニッセイ基礎研究所が行ったセルフ・ネグレクトと孤立死に関する実態把握によると、孤独死した8割の方がセルフネグレクトだったという報告があります。
生きるための能力や意欲を失った人々はセルフネグレクトとなり、自殺を選択するか孤独死してしまう現状があります。

またセルフネグレクトに陥っている本人は、自分がセルフネグレクトだと思ってない人やセルフネグレクトであることを周囲に隠そうとする傾向があるため、発見が難しく、自殺や孤独死という最悪の結果からセルフネグレクトだったことがわかるケースも多くあります。

セルフネグレクトの特徴や陥る原因とは


セルフネグレクトに陥る人は、最初から生活する上での能力や意欲がなかったのではなく、何かきっかけがありセルフネグレクトに陥ってしまうと言われています。
では何が原因でセルフネグレクトに陥るのでしょうか。
また、セルフネグレクトの人の特徴とはどういったことでしょうか。

セルフネグレクトに陥る原因

・老化による身体機能の低下
セルフネグレクトに陥る人は高齢者が多いと言われています。
理由としては、老化が原因で視力や筋肉などの低下により、通常の生活が困難になったことが挙げられます。
身体機能の低下で外出することが困難になると、人との交流が減少し、認知症やうつ病などの精神疾患を患うなど負の連鎖が起きて、セルフネグレクトに陥ってしまうケースがあります。

・死別や離婚による孤独
配偶者や家族が死別したり、離婚などで一人での生活を余儀なくされ、今までは誰かがやってくれていた家事を行うことができないことから、セルフネグレクトに陥ることがあります。いずれも通常の生活を送ることが困難になったことと同時に、必要としてくれる人がいなくなるといった喪失感から生きる気力を失い、セルフネグレクトになるケースもあります。

・経済的困窮
リストラなどで経済的に苦しくなると、生活にも余裕がなくなります。経済的に苦しくなると、栄養バランスの摂れた食事を取ることや必要なときに病院に行くことは難しくなり、健康状態が悪化することが考えられます。偏った食事を続けることや病院に行かなくなることもセルフネグレクトの状態と言えます。

セルフネグレクトの主な特徴

・ゴミ屋敷
セルフネグレクトに陥っている人は、いわゆるゴミ屋敷で生活している人が多くいます。
片付けができないからゴミ屋敷になった。という人はほとんどおらず、上記に述べたような原因以外にも多忙でゴミを捨てる時間がないことやなどをきっかけにゴミが溜まっていき、時間が経過するにつれてゴミ屋敷となることが多いとされています。

居住空間が乱れると生活の質を保つことが難しくなり、不衛生な状態での生活は孤独死を招く原因ともなりえます。

・必要な医療やケアを拒否する
病院に行く十分な経済的余裕がない場合や、人に迷惑をかけたくないなどの理由から必要な医療や高齢者であれば介護を拒否する特徴があります。病院に行かないことで侵されている病気に気付けないこともあります。

・何日も入浴や洗濯をしない
セルフネグレクトに陥っている人は自宅で大半の時間を過ごすことが多く、よって他人と接する機会があまりなく引きこもっていて、身体を清潔に保つことが億劫になり、何日も風呂に入らない、歯を磨かない。また洗濯せずに同じ衣服を着続けているといった特徴があります。

・十分な食事を取らない
生活する意欲がないため、食に関しても興味がなく栄養の偏った食事を取る、もしくは食事をしないといった傾向もあります。なかには経済的に食事を取ることができずに、栄養失調で命を落としてしまうケースもあります。

高齢者だけでなく若者にも多い理由とは


セルフネグレクトや孤独死は高齢者の問題だと思っている人が多いですが、若者もセルフネグレクトに陥り、孤独死するケースも多いことをご存知でしょうか。

また高齢者よりも若者の孤独死の方が重大だと考える人もいます。
その理由として、若者の孤独死は高齢者と比べて若者のセルフネグレクトに陥っている状態を気付いてくれる人が少ないことが挙げられます。

高齢者の場合、65歳以上になると介護保険などの福祉サービスを受けることができます。
また最近あまり見かけないなどの情報が自治体に入ると、民生委員が高齢者の自宅を訪れる機会があり、若者よりも気にかけてくれる人が多くあるのです。

一方、自ら働きかけを行わないと、自治体は若者に対して行動することはあまりないため、セルフネグレクトであっても気付いてもらえることが少なく、若者が孤独死するケースが増えてきています。
また、派遣社員などで社会との繋がりが希薄な人が多く、何か問題があっても頼れる人がおらず、セルフネグレクトになる若者もいます。

孤独死やセルフネグレクトを助けるためには


セルフネグレクトに陥っている人は自らSOSを出す人はあまりいないと言われています。
その結果、自殺や孤独死という結果を招いてしまうのです。
では、孤独死やセルフネグレクトから守るにはどのようにすればいいのでしょうか。

自治体や民間のサポート

高齢者には高齢者虐待防止法という法律があり、生命や健康が損なわれている状態であれば必要な援助を受けることができます。本人からの申し出がなくても自治体の職員や民生委員が自宅を訪れ、健康状態などを確認してもらうことができます。

民間企業ではセキュリティ会社や水道局、郵便局などが見守りサービスを行っています。サービス内容は定期的に自宅を訪れ生活を送れているかどうか確認してくれるというサービスです。

またSNSを利用した安否確認サービスもあります。家族が一人暮らしをする子どもや両親を登録して、一定期間連絡が取れなかった場合、登録している緊急連絡先に連絡が入る仕組みを取っています。遠くに住んでいてなかなか訪ねることができないようなときは、このようなサービスを利用するのもいいでしょう。

家族のサポート

何より大切なのは家族がそばでサポートしてあげることです。頻繁に訪ねたり、連絡をとることで自殺や孤独死などの最悪の事態を防ぐことができます。「連絡がないことは元気な証拠」とは考えずに頻繁に連絡を取ることを心がけましょう。

まとめ


家族との別れや離婚などは誰にでも起こりえることです。
セルフネグレクトはこういったことを引き金とし起こっていくので、セルフネグレクトも誰にでも起こりうると言えるでしょう。
そして、セルフネグレクトと孤独死は深い関係があります。

孤独死もセルフネグレクトも、周囲とのコミュニケーションの希薄さがもたらすことです。
自治体や民間企業のサポートもありますが、何より知人や家族のサポートが非常に重要となります。
セルフネグレクトや孤独死が起こりやすい環境を作らないことこそ未然に防げる方法ではないでしょうか。
些細なことでも自分にできることから始めてみましょう。